生活保護の不正受給とは?過去の事例を元にわかりやすく解説
【目次】
- 生活保護の不正受給とは
- 生活保護の不正受給事例
- 生活保護を不正受給すると返還義務が発生する
- 不正受給の割合
- 不正受給にならないためのポイント
- 生活保護総合支援ほゴリラの2つのサポート
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生活保護は、生活に困窮している人を救うためのセーフティーネットであり、日本国民なら誰でも申請することができる制度です。しかし、ごく一部の不正受給者がメディア等に取り上げられてしまうことで、生活保護を受けることそのものが悪いことであるかのように錯覚してしまっている方も少なくありません。
本記事では、生活保護の不正受給とは実際にどのようなものなのか、過去の事例をもとにわかりやすく解説していきます。
また、本記事を執筆しているほゴリラは、生活に困窮している方へ向けたサポートとして、専門家による生活保護申請の同行サポートや入居審査不要の賃貸住宅の提供を行なっております。生活保護の申請を少しでもご検討されている方や、既に受給している方で入居審査や契約費用の問題で転居したいのに出来ずにいるという方は、併せてお読みいただければ幸いです。 -
生活保護の不正受給とは
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生活保護の不正受給は、大きく以下の2種類に分類することができます。
- 生活保護受給者が申告しなければならない事柄を申告していない
- 自身の身分や現状を偽り不正に生活保護を受給する
上記どちらの場合においても、生活保護の不正受給であることに変わりありません。しかし、前者の場合は悪意の無いものも含まれているため、一般的に不正受給と言われるのは、後者の本来生活保護を受給する必要の無い人が、不正に生活保護を受給していることを不正受給と捉える場合が多いでしょう。なぜなら、メディア等で取り上げられる生活保護の不正受給のほとんどが後者であるからです。
以下で、不正受給の具体例をそれぞれ簡潔に解説します。 -
生活保護受給者が申告しなければならない事柄を申告していない
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このケースに該当するのは、生活保護を受給後に親族から仕送りを受けた場合や、日雇いのアルバイト等で収入を得た場合、フリマアプリ等でご自身の持ち物を売却した場合などの臨時的な収入を申告しなかったことが挙げられます。
生活保護受給者は、原則1円でも保護費以外の収入があった場合は申告しなければなりませんので、上記のようなケースでも、申告を怠れば収入を隠していたとみなされてしまうのです。
収入の申告についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、理解を深めたい方は参考にしていただけると幸いです。
生活保護はいくら稼いだら廃止になる?保護費と収入の関係性
他には、申告していない者との同居なども考えられます。
生活保護は個人ではなく世帯で受給するものであり、婚姻関係に無くても生計同一の世帯であれば1つの世帯として扱われますので、生活保護を受給しながらパートナーと同棲を始めた場合などは、申告しなければ不正受給になってしまいます。
パートナーとの同棲に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
生活保護者がパートナーと同棲する際の注意点を簡単に解説!
このように、収入を隠していた場合は悪意があると言えますが、申告しなければならないことを知らなかったケースが非常に多いため、不正受給だから一概に悪だとは言えないのです。 -
自身の身分や現状を偽り不正に生活保護を受給する
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生活保護を受給するには一定の条件を満たしている必要があります。上記の不正受給とは異なり、身分や現状を偽り、生活に困窮しているフリをして生活保護を受給することは悪意がある不正受給だと言えるでしょう。例えば、暴力団は反社会的勢力であり、国が保護する対象にはなりません。そのため、暴力団員が生活保護を受給することはできず、受給者が暴力団員であることが発覚した場合は、生活保護が廃止になります。
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生活保護の不正受給事例
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前項で、生活保護の不正受給にはどんなものがあるか簡単に解説しました。ひとえに不正受給といっても、悪質なものとそうでないものがあることがお分かりいただけたかと思います。
本項では、実際に生活保護の不正受給が発覚した事例を3つご紹介いたします。 -
2022/12/6 京都府の不正受給事例
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京都府警伏見署が、京都府向日市の解体業の男(66)を詐欺の疑いで逮捕。
逮捕容疑は、京都市伏見区に居住していた2015年10月~20年7月、市伏見福祉事務所に収入がないと虚偽の申告書を15回提出し、16年3月~21年1月の生活保護費432万円を不正受給した疑い。「少しでも良い暮らしがしたかった」と容疑を認めている。 -
2022/11/27 千葉県の不正受給事例
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千葉県習志野市から生活保護費を不正受給したとして、習志野署は詐欺の疑いで自称派遣社員(57)を逮捕。
逮捕容疑は、同市職員に収入申告書の総収入額欄に実際より少ない収入金額を記載するなどして提出。平成27年12月25日~30年2月1日、10回にわたって自身の口座に入金させるなどして計約163万円をだまし取ったとしている。 -
2022/11/8 岡山県の不正受給事例
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生活保護費を不正受給したとして、岡山南署は詐欺の疑いで無職の男(50)を逮捕。
逮捕容疑は2019年5月~20年10月に、パートで約106万円の収入があったにも関わらず、収入がなかったと虚偽の申告。19年7月~20年12月の間、18回にわたり、生活保護費約254万円をだまし取った疑い。「思い出せない」と容疑を否認している。 -
不正受給の年間発覚件数
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上記でご紹介した生活保護の不正受給は、どれも悪意のあるもので到底許されるものではありません。しかし、このような不正受給はあくまでほんの一部にしか過ぎず、多くの場合は逮捕にまで至らない些細な申告漏れです。
厚生労働省が公表している、平成23年から令和2年までの不正受給件数と内容の内訳がありますので、以下の表を確認してみましょう。 -
年度 不正受給件数 金額 1件あたりの金額 平成23年 35,568件 17,312,999千円 487千円 平成24年 41,909件 19,053,722千円 455千円 平成25年 43,230件 18,690,333千円 432千円 平成26年 43,021件 17,479,030千円 406千円 平成27年 43,938件 16,994,082千円 387千円 平成28年 44,466件 16,766,619千円 377千円 平成29年 39,960件 15,530,019千円 389千円 平成30年 37,234件 14,005,954千円 376千円 令和元年 32,392件 12,960,895千円 400千円 令和2年 32,090件 12,646,593千円 394千円 -
令和2年度 不正受給の内容 実数 構成比 稼働収入の無申告 15,878件 49.5% 稼働収入の過小申告 3,551件 11.1% 各種年金等の無申告 5,678件 17.7% 保険金等の無申告 771件 2.4% 預貯金等の無申告 387件 1.2% 交通事故に係る収入の無申告 391件 1.2% その他 5,434件 16.9% 計 32,090件 100% -
生活保護を不正受給すると返還義務が発生する
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生活保護費を不正受給すると、悪意のあるなしに関わらず返還義務が生じます。多くの不正受給は何かしらの申告漏れになりますので、あまり大きな金額になって返還に困るようなことはないでしょう。とはいえ、生活保護費はあくまで最低限の生活費になりますので、一括での返還が難しい場合は福祉事務所と相談して分割で返還できる可能性があります。
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悪意のある不正受給は返還金が増額する
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生活保護を不正受給するということは、国の税金を不正に利用するということですので、厳正に罰せられます。悪質だと判断された場合は「3年以下の懲役または100万以下の罰金」が課せられることになります。
また、懲役または罰金に処されると共に、不正受給した分の生活保護費を返還する義務も生じます。悪意なしと判断された場合は不正受給の全額を返還することになりますが、悪意があると判断された場合は40%の微収金が加算されます。つまり、仮に500万円の生活保護費を不正受給した場合、3年以下の懲役または100万円以下の罰金に加え、不正受給した分の500万円に40%を加算した700万円を返還しなければならないのです。 -
不正受給の割合
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生活保護の不正受給は、上記の事例でもご紹介したようなメディアで報道されるような悪質なものばかりが目立ってしまいがちですが、発覚している不正受給の割合でいうと毎年3兆円以上の予算が組まれている中の0.2~0.5%程度であり、決して多いとは言えない数字です。
全国民が生活保護の制度や仕組みを正しく理解し活用することで、不正受給0件が理想的ではありますが、生活保護費全体の金額から考えると僅かな金額であることがお分かりいただけたのではないでしょうか。補足として、生活保護費の予算で最も多く使われているのは医療費になりますので、病気や怪我など何かしらの理由によって生活保護を受給していることもご理解いただけるのではないでしょうか。 -
不正受給の調査方法
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生活保護の不正受給をしていないかどうか、福祉事務所が逐一調査することはありません。なぜなら、生活保護を申請する段階で収入や資産の調査は完了しているためです。また、生活保護世帯が増加する一方で、担当するケースワーカー(福祉事務所の職員)の数は増えていないため、1人あたりの負担が増えており、余裕がないことも理由として挙げられます。
そのため、不正受給の調査方法としては、基本的に通報があった場合などに現地での聞き込みや家庭訪問などで本人への確認が行われます。 -
不正受給にならないためのポイント
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上述した通り、生活保護の不正受給には悪意のあるものと、そうでないものがあります。悪意がなければ少額の返還でことなきを得ますが、「知りませんでした」で許されるかどうかは金額にもよります。間違って不正受給してしまわないよう、以下で詳しく解説していきますのでぜひ参考にしてみてください。
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収入は"全て"申告する
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生活保護における収入は以下の2種類に分けられます。
- 就労を伴う収入
- 年金等、就労を伴わない収入
生活保護は、受給者が就職して安定した収入を得ることで経済的な自立ができるよう支援する制度です。しかし、一生懸命働いても生活保護費未満の収入しか得られない場合は、全額差し引かれてしまうため就労への意欲が低下してしまう危険性があります。そのため、就労を伴う収入とそうでない収入では、手元に残る生活費が異なるのです。 -
就労を伴う収入
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就労を伴う収入がある場合は、全額差し引かれることにはならず"勤労控除"が適用されます。これにより、働いていない人より働いている人の方が多くの生活費が支給されることになるため、受給者の就労意欲の低下を防ぎ、経済的自立の支援を可能としているのです。
勤労控除の金額は非常に細かく分けられているため、下記で少しだけご紹介します。詳しく知りたい方は、厚生労働省が公表している生活保護制度における勤労控除等についてをご参照ください。 -
収入 控除額 15,200円未満 同額 15,200~18,999円 15,200円 19,000~22,999円 15,600円 23,000~26,999円 16,000円 27,000~30,999円 16,400円 31,000~34,999円 16,800円 35,000~38,999円 17,200円 -
就労以外の収入
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上記の就労を伴う収入以外は、収入分の金額が差し引かれた金額が生活保護費として支給されます。例を挙げるとすれば以下のような収入が該当します。
- 年金
- 慰謝料や養育費
- 仕送り
- 宝くじの当選金
等々、例を挙げるとキリがありませんが、中でも気をつけなければならないのは慰謝料や養育費です。
生活保護受給者にはシングルマザーなどのひとり親家庭も多いですが、離婚に伴い慰謝料や養育費を受け取っている方もいらっしゃるでしょう。残念ながらこれらのお金も収入としてみなされてしまうため、その分が生活保護費から差し引かれてしまうのです。
とはいえ、生活保護は特にひとり親家庭の場合、多くの扶助や加算を受けられるため、養育費や慰謝料がなくても生活に困ることは少ないでしょう。 -
世帯人数の変更を申告する
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生活保護は世帯で受給するため、世帯人数によって支給額が変動します。
子どもが独り立ちするなど、事実上、生計同一ではない者がいることを申告していない場合や、友人や恋人と同居している場合など、生活保護の支給額に変動があるだけでなく、そもそも生活保護の受給対象では無くなる場合もあります。
このような事実が後から発覚した場合は、保護費の返還義務が生じるほか悪質だと判断される可能性もあるため、必ずケースワーカーに申告するようにしましょう。 -
不正受給をしないために最も大切なこと
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生活保護は「このような場合はこうなります」と、考えうる事柄のほとんどが明確にされているため、少しでも疑問に思ったことは担当のケースワーカーに確認する癖をつけましょう。
たった1円でも不正受給は不正受給です。 -
生活保護総合支援ほゴリラの2つのサポート
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ここまで、生活保護の不正受給について解説しました。
生活保護の不正受給にはメディアで報道されているような一部の悪意のあるものと、そうでないものがあることなどがお分かりいただけたかと思います。
本記事を執筆しているほゴリラでは、これから生活保護の受給をご検討されている方のために「生活保護の申請同行サポート」、賃貸の入居審査に通らない生活保護受給者の方のために「楽ちん貸」というサービスを行なっておりますので、以下で簡単にご紹介致します。 -
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著者
井口 優
株式会社フォーユー 代表取締役社長生活保護は発足から70年以上も経過している制度であるにもかかわらず、未だ国民の理解が低く、「生活保護をよく知らない」ことが原因で、受給できるのに受給していない方が多くいらっしゃいます。ほゴリラのサービスを通じて1人でも多くの生活困窮者に手を差し伸べることで、日本全体の貧困問題を解決する一助となれるよう日々精進していきたいと考えています。
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